毎月末。取引先ごとにExcelの請求書ファイルをコピーして、日付と金額を打ち替えて、PDFにして、メールに添付して、一件ずつ送る。
件数が10件、20件と増えてくると、この「簡単だけどミスが許されない作業」に、毎月数時間が消えていきます。しかも、転記ミスや送り忘れがあれば、信用にも関わる。
そんな請求書まわりの手作業を、Googleスプレッドシートと無料のしくみだけで自動化する方法を、実際に動くコードごと公開します。
個人事業主になって、はじめてこの面倒さを知った
このツールを作ったのは、私自身が副業として個人事業主になり、毎月、自分で請求書を出すようになったからです。
それまで、請求書を作って送るのは自分の仕事ではありませんでした。それが副業を始めて、毎月のことになる。最初の数件は、正直どうということはありませんでした。
でも、取引先が増えてくると話が変わります。月末に、似たような請求書を何枚も作る。金額を打ち替え、PDFにして、宛先を確認して、一件ずつ送る。作業そのものは難しくないのに、「間違えたらまずい」という緊張感だけが毎月積み重なっていく。
「これ、毎月やるのか」と思ったとき、自動化することにしました。そして、同じところで地味に消耗している個人事業主・小さな会社は多いはずだ、と思ったので、テンプレートとして公開することにしました。
Googleスプレッドシートで請求書を自動作成する仕組み
今回つくったのは、Googleスプレッドシート上で動く請求書ツールです。やることは3つだけ。
- 「設定」シートに自社情報(会社名・振込先など)を入力する
- 「請求データ」シートに、請求内容を入力する
- メニューの 「請求書を作成」 を押す
これだけで、取引先ごとに請求書PDFが生成され、小計・消費税・合計が自動で計算され、取引先ごとにGmailの下書き(PDF添付・本文つき)まで用意されます。

あとは下書きを開いて中身を確認し、問題なければ送信するだけ。慣れてきたら、まとめて自動送信するメニューも使えます。
どれくらいラクになるか(試算)
これまでは、1件あたりおよそ10分。コピーして、編集して、PDFにして、添付して、送る。20件あれば、月に3時間以上かかっていた計算です。
これが、入力さえ済んでいれば、ボタン1つと最後の確認だけで終わります。
※「1件10分 × 20件」を前提にした試算です。実際の効果は、件数や運用によって変わります。
「動けばいい」にしなかった理由
ここが、このツールで一番伝えたい部分です。
請求書のようにお金とお客様に直結する処理は、「自動化できた」だけでは不十分だと考えています。自動化したことで、かえって事故が起きやすくなることがあるからです。ボタン1つで全員に送れるということは、ボタン1つで全員に誤送信できる、ということでもあります。
そこで、作りはじめる前に、こういう要件を先に決めました。
- 誤送信を防ぐ:既定は「下書き作成」にして、送信は別メニュー+確認ダイアログにする
- 入力ミスで途中で止まらない:PDFやメールを作る前に全件をチェックし、1件でも不正なら処理を始めない
- 二重送付を防ぐ:処理が終わった行に「ステータス」と「日時」を記録する
- 詳しくない人でも導入できる:メニューの初期セットアップで、サンプル入りのシートを自動でつくる
- 変更が怖くない:会社名や振込先は、コードではなくシート側で管理する
「いきなり全部自動送信」ではなく、「人が最後に確認する余地を残す」。地味ですが、実務ではこの設計が効きます。同じ機能でも、要件をどう決めるかで、使ったときの安心感がまったく変わります。
使ってみる(コードは全公開)
コードはGitHubで公開しています。MITライセンスなので、自由に使えます。
🔗 mamagotolab/gas-invoice-automation
導入はかんたんです。
- Googleスプレッドシートを新規作成する
- メニュー 拡張機能 → Apps Script を開く
- 公開している
Code.gsの中身を貼り付けて保存する - シートを再読み込みすると「請求書ツール」メニューが表示される
- 「初期セットアップ」を押すと、サンプル入りのシートが作られる
GAS(Google Apps Script)とは? Googleのサービス(スプレッドシートやGmail)を動かせる、無料のプログラムのしくみです。サーバーの契約も、アプリのインストールも要りません。
よくある質問(FAQ)
Q. 完全に無料ですか?
A. はい。Googleアカウントがあれば、追加費用はかかりません。スプレッドシートもGmailも、もともとの機能の範囲で動きます。
Q. 1日に送れるメールの上限はありますか?
A. あります。Google Apps Script経由のメール送信は、無料のGoogleアカウントで1日100通(受信者数)まで、有料のGoogle Workspaceで1日1,500通までです。これは「送った相手の数」で数えます(1通を10人に送れば10件としてカウント)。通常の請求業務であれば、まず上限には当たりません。
Q. インボイス制度(適格請求書)に対応していますか?
A. このテンプレートの初期状態では、登録番号(T+13桁)や税率区分の記載は入れていません。シートとコードに項目を追加すれば対応できます(カスタマイズの定番です)。
Q. 請求書のデザインは変えられますか?
A. 変えられます。請求書のレイアウトはHTMLで作っているので、自社のロゴや色、項目に合わせて調整できます。
Q. プログラミングの知識は必要ですか?
A. 導入(貼り付け)だけなら不要です。ただ、自社の運用に深く合わせたい場合は、多少のカスタマイズが必要になります。
カスタマイズ・ご相談
このテンプレートをベースに、こんな拡張がよく求められます。
- 自社のフォーマット・ロゴに合わせた請求書デザイン
- インボイス制度(登録番号・税率区分)への対応
- 入金消込・未入金チェック・督促メールの自動化
- 会計ソフト(freee・マネーフォワード等)との連携
- 請求書のGoogle Drive自動保存・採番
「自社の業務に合わせたい」「会計の流れごと整理したい」というご相談を承っています。業務の流れを整理する“要件定義”から、運用後の保守まで対応します。
- ホームページ:https://mamagotolab.com
- ご依頼(ココナラ):https://coconala.com/users/5986442
おわりに
請求書の手作業は、難しい作業ではありません。だからこそ、毎月の時間とミスのリスクとして、静かに積み重なっていきます。私自身がそうでした。
今あるGoogleアカウントだけで、ここまで自動化できます。まずは公開しているテンプレートを動かしてみて、「これは使えそう」と感じたら、自社向けに育てていく──そんな進め方をおすすめします。
🔗 コードはこちら:mamagotolab/gas-invoice-automation
ママゴトラボは、業務の自動化ツールを要件定義から設計してつくる開発ラボです。
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